
2011.12.02up text rumiko igaki photo bistropapa
〔インタビュアー(以下イ)〕
こんにちは! さっそく、はじめましての読者の方へ自己紹介をお願いします。
〔ビストロパパさん(以下ビ)〕 パパ料理研究家の滝村雅晴です。今は株式会社ビストロパパの代表と、NPO法人ファザーリング・ジャパンと東京ガス、ビストロパパ社との共催で始めた「パパごはんの日」プロジェクトの代表をしています。
〔イ〕 パパ料理研究家とは?
〔ビ〕 お父さんに、趣味ではなく日常の家庭料理を作ってもらうきっかけを啓蒙している研究家です。パパ料理の対極に置いているのが男の料理、男の料理は自分の食べたいものを自分の都合で作る趣味の料理なんです。
〔イ〕 確かにそうです! さすが男性だけあって鋭い!(笑)
〔ビ〕 パパ料理は自分がお腹が空いていなくても、家族のために作るお父さんの家庭料理。生きていくために必要なリテラシーが料理だと思っているので、ぜひお父さんにも家族のために料理を作って欲しいとメッセージを出しているんです。
〔イ〕 男性にも料理を作ってもらえたら女性の家事への負担も減りますよね。
〔ビ〕
僕が調査したところによると、パパは4人にひとりは週に1回何らかの料理を作る、と言っているんですが、同様にママにも聞いたところ、ほぼしないというのが50%以上。
嫁にとっては「作ってもらった記憶がない」、もしくは「そんなの料理じゃない」というわけなんです。
パパが料理を作る理由の上位に「節約だから」と思って作っているんですけどママは「全然そんな風に思っていない」というが現状のようです(笑)。
そういうわけで男性が料理を作らない理由は、アンケートから「料理が下手だから」「妻の料理が上手だから」という意見があったのですが、妻から見たらそれは面倒くさがっているように思うようで…。
そんな風に夫婦でお互いの気持ちを理解しないと、永遠に「やってやった」「やってもらってない」、というズレが出てきますよね。
〔イ〕 はい、きっとそのズレは料理だけじゃないですよね。
〔ビ〕 そうなんです。家事、育児でもアンケートしたら、「平日はまったくやらない」というパパの回答は12.6%、ママからしてみたら「まったくやらないパパ」は39.3%と、やはり違います。
〔イ〕 なるほど。考えの差というのが数字で見るとはっきり分かりますね。 ビストロパパさんは今、そんなママとパパの考えのズレを料理から橋渡しをしているような存在でもあるわけですね。そもそも、ブログをはじめたきっかけというのは?
〔ビ〕
元々、料理をしていたわけではなく子どもが生まれる前は共働きで忙しく、外食が好きで、毎晩焼き鳥やさんとか飲み屋さんで妻と落ち合って夕食を食べていました。
子どもが出来て食べ歩きに行けなくなり、自分で作ってみようかと思った時、行正り香さんの「ものがたりのある一皿」を薦められて、初めて丁寧にレシピ通り材料を買って作ったんです。
それが鯛のカルパッチョとプチトマトのパスタだったんですけど、食べた僕がびっくりしたんです。美味しいって。自分が作ったのに作り方は僕じゃない。その人が美味しいと思った料理を、その人に成り代わって再現しているのにビビッときたんです。
今まで縁の無かった料理を作ること。
でも、レストランで出る味が自分で出来て、これだ! と思いました。
と、同時に「これから美味しいものが自分で作れる」というフリーダムを感じたんです。
〔イ〕 そこから起業もされて本当に、フリーダムを手に入れた感じですね。
〔ビ〕
料理を作り始めた頃は、起業しようと思ってもいなくて、意識しだしたのはブログを続けていってからでした。朝起きて、ブログをアップする生活習慣にリズムが出てきて。毎日書けるんじゃないかなと思って書き始めたのが2006年3月19日。
それから、ずっとこれまで1日も欠かさずブログを書いていますね。2000日以上ブログを書いていますね。パパの料理というテーマだけで1日も休まず。
料理ブログを飽きないで書き続けられて、これは本物だと思って新しい志を目指そうと思ったんです。料理から自分の生き方や考え方が変わってきたんですね。
〔イ〕 凄い変化ですね。
〔ビ〕
ただ最初は男の料理にはまって。週末はスーパーでレシピ本を広げながら食材を探して、帰って、レシピを読みながら1品作る、そしてまた見て1品作る。
凄く時間が掛かっていました。友達を招いては手料理を振舞い、僕は酔っ払って寝る。
朝になったら洗い物がきれいになっていて、「昨日楽しかったよね」って妻に言ったら「別に」と。「何で?」と聞いたら「言わせるの?」と…。
作りながら洗うというのを知らないパパだったんです。本当に男って分からないんですよ。料理を作り始めて1、2年経って初めて気が付きました。
〔イ〕 じゃあ、まずは全然料理をしない旦那さん、もしくはちょっと料理に興味を持ち始めた旦那さんが片づけもしながら家庭料理を作ってもらうようにするにはどうしたら良いんでしょう?
〔ビ〕 料理上手で、後片づけも上手なパパの家に遊びに行くんです。その人が料理を作るイメージが無かったら、そこでもっと衝撃を受けます。
〔イ〕 旦那さんは、友達パパが後片づけしていることまで気が付くんでしょうか?
〔ビ〕
その瞬間に気が付くことはないけど、種まきは必要です。ささやかなその芽は、だんだん育つんですけど、「片してないじゃない」とか「材料費が掛かりすぎ」とか、ぺしゃっとつぶしちゃいけない。男性は調子に乗りやすく叩かれると弱い。まったく料理をしなかった僕が言うからそう(笑)。相当面倒くさい生き物なんです(笑)。
僕が最初にやっていたのは料理じゃなくて調理で、料理好きではなく調理好きだったんです。
パパ料理の場合は、日常の家庭料理としてあるものなので、夜ごはんの食材を朝ごはんと昼ごはんへ使えるように計算しますが、それはまだ先の段階なんですね。
〔イ〕 ゆっくりと“パパ調理”から“パパ料理”の芽に育てる感じですね。 でも、そうして女性の家事や料理の大変さも分かって分担出来たら嬉しいですよね。 そう思うと主婦は凄いですね。自然にそれをやっていますからね…。
ブログを更新し続けるうちに、パパ料理の楽しさに開眼して起業したビストロパパさんにとってのブログとは…
「自分の本当にやりたいことを整理して情報発信したものが見られてアウトプットして世界が広がっていくツールです。
夢が育っていった場ですね。自分のやりたいこと、志が強くなって会社を辞めたんですが、誰よりも家族のためにお父さんが作る料理を伝えたいと思ったんです。」
行正り香さんのレシピ本との出会いから自分の夢の種を発見し、ブログとの出会いがその種を育てていくツールになったんですね。そう思うと日常の生活の中には、キラキラとした希望の種がたくさん秘められているように思えますね。
ビストロパパさんが、ブログをしていて嬉しかったことをお聞きしたら、料理を作るきっかけになった「行正り香さんからブログへコメントを頂いたこと」とおっしゃっていました。「それが12月24日だったんです。凄い嬉いクリスマスプレゼントだったんですよ。」
サンタさんが本当にプレゼントを届けてくれたような心温まるエピソードですね。
後編は今年最後のインタビューです。12月22日更新予定。どうぞ楽しみに♪
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