
2011.02.04up text rumiko igaki photo Farmer's KEIKO
〔インタビュアー(以下イ)〕
はじめまして。さっそくですがKEIKOさんの、自己紹介をお願いします。
〔Farmer's KEIKOさん(以下K)〕 はじめまして。Farmer's KEIKOです。京都の山に囲まれた村で農業をしています。今は、60種類ほどの野菜を4000平米の畑で、旬の時期に栽培しています。
〔イ〕 KEIKOさんは元々、農業をされていらしたのですか?
〔K〕 主人は10年前まで、私は8年前までは普通の町に暮らし、会社勤めをしていました。
〔イ〕 農業に転職されたきっかけというのは?
〔K〕 以前から第一産業…自分で獲ったもの、作ったものを売り、生計を立てる事に興味がありました。自分の頑張りがそのまま反映させられる、大変だけどやりがいのある分野です。それで、実は最初は農業ではなく漁業を目指していたんですよ(笑)。
〔イ〕 漁業を目指していたとは、凄いですね!
〔K〕 私は海女さん、主人は漁師。いたって真剣に考えていました。全国色々な場所へ出向いては、色んな方のお話を聞いたのですが、実際は自分の努力だけではどうしようもない現実が浮かび上がったんです。まず魚がいない。今から専業で漁業だけで生計は立てられない。
船も中古で何千万円もする。海女さんは外から来た人が、突然なりたいと言ってもなれない。(今から考えれば当たり前ですが…)そこで、農業に目を向けたんです。でも、当時の私は野菜嫌い。魚も嫌い。お肉大好き。肉は調理も簡単ですしね。
〔イ〕 野菜も魚も嫌いなのに、その仕事には就きたかったというのは興味深いです。 しかも今の日本の産業でも、なかなか成り手が少ない分野ですよね。
〔K〕
農業をされている方から野菜を頂いて食べた時、本当に美味しいって思ったんです。こんなに美味しい野菜があるんだという事を初めて知って、さらに興味を持って色んな地域へ出向いてお話を聞き、農業をしたいという気持ちが膨らみました。
でも、農業だけで生計を立てることは難しく、かなり悩みましたが、まず最初に主人だけが農業をし、しばらく私は今までの仕事を続けることにしたんです。
そして2年後、何とか最低限の生活は出来ると考えて、私も会社を退職して2人で専業農家になりました。今は周りに信号もコンビニもスーパーも、飲食店も、病院も、電車も何も無い、山に囲まれた小さな村に住んでいますが…最高の判断をしたと思っています。
〔イ〕 悩んだ末に飛び込んで、最高の決断だったんですね。農業を実際にやってみて、いかがですか?
〔K〕
最初に栽培したのは“小松菜”で、スーパーで売られている小松菜を自分で作れた時は感動しました。1ミリほどの小さな小さな種が立派な小松菜になって、涙が出そうなほど嬉しかったです。
今では色んな野菜を栽培していますが、最初の感動を変わることなく感じ続けています。天候不良で枯れてしまうのでは、と心配した野菜が頑張って生き返った時や、年に1回しか栽培できない夏野菜のキュウリやピーマン、ナスなどが立派に育って大きな実がなった時は嬉しいですね。野菜の成長を見守ることが本当に楽しく幸せに感じます。
逆に大変なことは、やはり年々気候の変化が激しく、予想がつかないこと。
昨年の夏は、農業を始めて10年ですが一番の不作でした。
〔イ〕 昨年の夏は人間にとっても、生活しづらい気候でしたものね…。
〔K〕 はい。まず、苗を植える時は雨続きで畑が耕せない。いざ苗を植えると雨が降らない。梅雨は降水量が多くて畑が水浸しで、野菜の根も弱ってしまう。梅雨が明ければ雨が降らない…。本当に大変な年でした。でも、先輩農家さんは「いい年もあれば、悪い年もあるさ」という感じで悪い状況もすべて受け入れているんですよね。だから私も昔なら落ち込んでしまう最悪の状況なんですが、『なんくるないさ〜』と心に言い聞かせて、頑張っています。
〔イ〕
では、農家を始めてから、ブログをスタートしたきっかけというのは?
〔K〕 ブログを始めたきっかけは、私が住んでいる村に「eo光」が開通したからなんです。今までISDNだったんですよ。動画も見れない、写真もメールで送れない、インターネットのサイトもスイスイ見られないISDNです。
〔イ〕 去年の6月頃にブログがスイスイ見られるようになったんですね。その衝撃をお察しします!
〔K〕 eo光が開通した時は嬉しかったですね〜! だっていろんなサイトが楽に見られるんです(笑)。その時に初めて色んな人のブログを見て楽しくて、畑仕事も忙しい時期なのに夢中になって読みふけってました。そして「私も書きたい! 」って思ったんです。
〔イ〕 実際にご自身でブログをなされてどうですか?
〔K〕 昨年の6月28日にブログを始めたのですが、その頃は忙しくて休みもまったくなく、1日の中で自分の自由時間はたった2時間だけ。その2時間で初心者の私がブログを入力するわけですから、もう大変でした。せっかく書いても文章が一瞬にして消えてしまったり、思うように記事が書けなくて。
〔イ〕 そうですよね。まったく慣れてないところからのスタートは大変ですよね。
〔K〕 でもね、そんな時、1人の読者さんに救われたんです。「携帯電話から応援のポチをしたいけどできない」とコメントがあって。こんな私のブログを楽しみにしてくれている読者さんがいることを知って乗り越えられました。 続けるのがしんどい時に励ましてくれて。その頃の読者さんの名前、全員覚えています。本当にありがたいと思っています。だから、ブログを辞めたいとかは思ったことはないですね。続けると自分と約束しましたからね。でも、最初の頃は辞めざるを得ないかも? とは思いました(笑)。
〔イ〕 励ましてくれた方も、お名前を覚えて下さっているのを知ったら、きっと嬉しいでしょうね。では、ブログをアップする際に工夫していることは?
〔K〕 「見やすく」、「分かりやすく」、「伝わりやすく」を心がけています。私自身、若干老眼気味(笑)なので文字は大きくして「見やすく」しています。 そして、レシピは料理に不慣れな人でも作れるように「分かりやすく」しています。それは私自身、新婚の頃、料理本を見てもよく分からなかったからなんです。文字で「拍子木切り」「いちょう切り」って書いていても切り方がまったく分からない(笑)。
〔イ〕 確かに、お料理の初心者だとそうかもしれませんね〜(笑)。
〔K〕 はい。だから、できるだけ写真を多くして、写真を見れば大体の作り方が分かるようにしています。難しそうな漬物や保存食も写真が多ければ「作ってみようかな?」って思ってくれる気がして。野菜をたくさんの人に食べてもらいたいので、「これなら作れるかも?」って興味を持って貰えることを心がけています。 ブログの記事は事前に何も考えていないんです。その時に面白かった事、楽しかった事、感動したこと、色んな感情を飾らずに自分の言葉で伝えるようにしています。
〔イ〕 確かに、毎日の畑の様子や山の生活が、リアルに伝わってきますね。
〔K〕 そのほうが自分も楽なんです。大阪出身なのでたまに大阪弁になってしまうんですが(笑)。ブログというのは文字だけの交流ですが、素直に飾らず伝えれば、心まで伝わると思うんです。
〔イ〕 私もそう思います。ブログでも美味しそうな野菜の料理をご紹介されていますが、今の季節に美味しい野菜や食べ方があったら、教えてください♪
〔K〕 旬の野菜は栄養価が高くて、今が旬のホウレンソウは、夏のホウレンソウと比べてビタミンCが3倍です。 たとえば、ホウレンソウをざく切りにして牛肉と一緒に炒めて、塩コショウだけ。食べる時にほんの少しの旨味調味料と醤油と鰹節をかけていただきます。シンプルだけどホウレンソウの旨味が味わえますよ。 それから、どうしてもひとつ伝えたい事があります。
〔イ〕 はい、ぜひ♪
〔イ〕 野菜というのは捨てる所に栄養があります。セロリの葉、フキの葉、大根の皮、ゴーヤのわた・種、かぼちゃの種、大根の葉、玉ねぎの皮など…。野菜は捨てるところなどは、ほとんどないんですよ。栄養豊富なのでぜひ、食べてくださいね!
〔イ〕 なるほど! 根っこに栄養が詰まっていると良く聞きますが、こうして実際に作られる方から聞くと、より説得力がありますね。
KEIKOさんにとってのブログは「日記兼アルバム」。
「載せているレシピも実際に前日か当日の作った料理ですし、その時にあった出来事をそのまま書いているので、日記のようなアルバムのような、そんな感じです」
毎日朗らかな口調で野菜の美味しさを語りかけてくれるKEIKOさんの「Farmer's diary」、これからも大切に読ませていただきたいです。
〔イ〕 では最後に、今後のブログの夢などはございますか?
〔K〕 う〜ん…そうですね…今のままでいいと思います。 素直に思ったままの事を書いているので、今から将来の夢とか展望はないけれど、自分の想いや伝えたい事が増えればブログの内容もその時に変わってくると思います。
「ブログならではのエピソードを教えてください」とお聞ききしたら、インドに住む日本人の方との交流を教えて下さったKEIKOさん。
「遠いインドが近くに感じて、ブログは住んでいる地域を越えて繋がっていると思いました」とのこと。KEIKOさんの野菜の美味しさや自然の魅力を語るその思いは、日本でも海外でも距離を問わず、皆さんへ届いているんですね。
次回後編は2月18日更新予定。飾らないナチュラルなKEIKOさんの日常生活や幼少の頃のエピソードに迫ります♪ お楽しみに!
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