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レシビブログインタビュー:recipe & life「おいしい暮らし」前・後編  毎月二回更新
第30回目 ぱにぽぽ Sucre-en-Rose♪ *panipopo & paniヴァンのキッチンから* panipopoさん 前編
ぱにぽぽ Sucre-en-Rose♪ *panipopo & paniヴァンのキッチンから* panipopoさん

2010.07.02up text rumiko igaki photo panipopo


〔インタビュアー(以下イ)〕 
はじめまして。今回はご登場頂き、ありがとうございます。ちょうど日本での生活が始まって、このインタビューにご登場頂くのも不思議なタイミングですね。
panipopoさんはフランスのコルドン・ブルーを卒業していらっしゃって、パティシエとしてご経験を積まれたそうですが、そのきっかけとは?


〔panipopoさん(以下p)〕 
高校生の頃にアメリカに留学して、そのままアメリカの大学に進み、就職してアメリカで生活していました。ある時、お菓子のまずさに一念発起! (笑)。アメリカのお菓子は砂糖付けのお菓子しかなくて。
それまでは、アメリカでずっと生活していこうと思っていたのですが・・・お菓子と言えば、フランス。 なので、フランスのコルドン・ブルーに行って製菓を根本から習うことにしました。その前から自己流でいろんな本から作り方を学びましたが、どうせ習うなら本場でと思いフランスへ。
仕事も辞めてパリで1年間、製菓を学びグランド・パティシェール・ディプロムを修了してパリ市内のホテル2軒(プラザ・アテネとオテル・ド・クリヨン)でスタージュ(研修)をしてから、更にパリの料理、お菓子学校ル・ノートルで飴細工を学びました。その後は、またアメリカに戻り、パティシエとしてリゾートホテルで働いていました。


〔イ〕  そして、フランスで知り合ったフランス人のご主人と、ご結婚されて。


〔p〕  結婚を機にまたパリに戻り、その後は夫の仕事の関係で海外を点々としている生活でした。


〔イ〕  ブログをはじめたきっかけは?


〔p〕  2年半前にブログを始めたのですが、その前までずっと不妊治療をしていて。 砂糖を使うお菓子は体に悪いと思っていたので、自分でお菓子を作ることも止めていました。ところが、一生懸命に赤ちゃんを授かるようにと体を準備していたはずなのに、反対に体を壊してしまうような、辛い治療が続いて、治療を止めたのですが・・・今度は絶望感でいっぱいで、プチウツに。
これからどうしようと思った時に日本に帰国する友達が、私にオーブンと製菓道具と材料をすべて無料で残して行ってくれました。 夫の後押しもあり、少しずつお菓子作りを始めたのがブログをするきっかけです。それがリハビリになって、心も落ち着いてきて。お菓子作りを通して、自分も周りの人もハッピーな気持ちになれたらいいなと思いました。何か自分に出来ることといえばお菓子作りかなと思ったのがきっかけなんです。
パティシエとして働いたときから、実は5年ちょっとのブランクがあったのですが、自然に原点に帰って。ブログを始めてからは、毎日のようにお菓子作りをしています。


〔イ〕  オーブンと材料を残して下さったお友達は、転機を作るきっかけを下さったんですね。


〔p〕  はい。「お菓子作らないの? 」って。もったいないからと、オーブンや製菓材料を置いていってくれました。 お菓子作りやブログを通じて、世界中にいる人たちと繋がり、生活のリズムに張り合いが出来て、不妊治療の失敗で自分に自信がなくなり卑屈になっていたのに、少しずつ自分のやりたいことが見えてきて。その世界を確立できたことが大きかったですね。それによって、劣等感がこれまた少しずつ消えて行き、ちょっと自信がついたんです。
ブログの友人がフランスで義理の両親と住んでいた時に、「会いませんか? 」と誘って下さったり、他の方も「気軽に遊びに来てください。」と、日本食を作って、もてなして下さったり。なかなか、見ず知らずの人を招いたり、手を差し伸べて下さる方って居ないと思うのに、「ブログの力は凄いなあ」と、思います。


〔イ〕  なるほど。世界的に有名なお菓子の学校を卒業して、フランス人のシェフの旦那様と世界を股に掛けて生活していらっしゃる姿は、一見、別の世界に居る方のようなセレブな雰囲気もある気がしますが・・・ブログをずっと見ている方はそうじゃない部分を分かっていらっしゃるんでしょうね。


〔p〕  決して恵まれているわけではないし、私はいたって普通なんです。 そういう意味では、いい方に恵まれてラッキーだと思います。
いい方と言えば、ブログをしていて、とても嬉しかったことがありました。 お菓子作りを始めたのが中学生のときで、本屋さんで入江マキさんの『可愛い人へ、お菓子の絵本』がお菓子作りのきっかけになったのですが、その思い出の本の話をブログに書いたら、絶版になっていたのにも関わらず、ある方の実家に保存してあり、当時住んでいた韓国までまで送ってくださったことがありました。 本当に嬉しかったです。
これも、ブログをしていたからこその巡り合いだと思います。


〔イ〕  その方にとっても思い出が詰まっている本を頂ける、それは凄く貴重で嬉しいことですね。
他に、ブログで心掛けている事ってござますか?


〔p〕  私は素材を見ると閃くタイプで、あっと思われるような素材や、組み合わせのお菓子を作るのが好きです。
特にこのごろはヘルシーなお菓子作りにも目覚めて、オリーブオイル、グレープシードオイル、アボカド、野菜を使って美肌に良いお菓子を作っています。素材を大切にしたいので、季節の物を使ってお菓子レシピを作るのが得意です。


〔イ〕  確かに、今回ご紹介頂いた抹茶のフィナンシェも、日本ならではの抹茶を使って品があり、ヘルシーです。


〔p〕  はい。このレシピは、フランスのレストランで働いた頃の思い出のレシピで。 シェフに「抹茶のフィナンシェが作りたい! 」と言ったら「お前には、まだ早い! 」と言われながらもチャレンジしたら私が働いていた当時は抹茶も珍しく、 シェフやお客様に美味しいと喜ばれたレシピなんです。
ちなみに、修行のために無給金で働いていたのですが、最後にシェフがある有名なレストランで美味しい食事をご馳走して下さって、嬉しかったですね。


〔イ〕  舌の肥えたフランス人シェフに認められた抹茶のフィナンシェなんですね。
ブログにも書いていらっしゃいますが、お菓子を作る上での簡単なコツを幾つか教えて頂けますか?


〔p〕  はい。 お菓子では良く使う卵。卵は特にレシピの中で表記が無い場合、室温に戻しておくと、卵の泡立てもスムーズに手早く出来ますよ。
それから、卵黄と砂糖を混ぜる時には、砂糖を入れたら すぐに混ぜた方がいいです。そうしないと卵黄が固まりますので・・・。
また、バターを早く柔らかくしたい時は電子レンジもそうですがヘアドライヤーを使うのも便利です。
あと、バニラビーンズが固いときには、1日以上、ひたひたの ラム酒に漬けておくと柔らかく、風味も良くなります。
また、タルトなどを作る行程で、型にバターを塗るときには、溶かしバターを ハケを使って塗るか、柔らかいバターを使う。それをいったん冷蔵庫で冷やし固めてから、今度は小麦粉をまんべんなく打ちつけて、余分な粉はトントンと型を 打ちつけて払っておく。そうやって準備した型は使うまで冷蔵庫に入れておきます。


〔イ〕  1回バターを塗ってから、粉を振って冷蔵庫で冷やすと、仕上がりにどんな差が出るのでしょうか?


〔p〕  主回数は1回でも2回でもいいんですが、テフロンのような加工をしてあるものは、私は1回だけ柔らかいバターを塗ります。テフロンだったら塗る必要もないものがありますが、塗ると焼き菓子に大切な美しいツヤのある焼き菓子本来の姿に焼き上がります。つまり焼き上がった時に、美しさに差が出ることを考慮しています。
そして、アルミの型はやはりバターを2回塗ることによって、型出しをスムーズにすること、潤滑油のような働きが出来ます。また完全にバターが固まった状態で粉を振るのは、粉に油染みや粉の白い色をつけるのを避けるため・・・この油染みによってお菓子の表面が汚くなるのを防ぐために冷蔵庫でバターを固めてから粉をはたくのですが。粉をはたくのは、やはり型出しをスムーズにするためですね。


〔イ〕  そういえば、ある著名なパティシエの本を最近読んだ時、「細かい面倒なプロセス が大切」とおっしゃっていたのですが、まさに、その通りですね。


〔p〕  はい。そうなんですよ。作り方のプロセスとかも、お菓子作りの初心者さんの立場に立って、なぜそんなプロセスを踏まないといけないかとかも丁寧に説明するように心がけています。私も最初は、まったくの独学でお菓子を勉強してきたのですが、やはりプロになるための勉強とプロとしての仕事を少しかじってみて、いろんな場面で目からうろこのテクとかがありました。それを簡単に、分かりやすく説明出来たら・・・と思っています。
ブログでは、簡単に出来て美味しいお菓子のレシピを提供してこそプロだと思っているので、そのために心を砕いています。ブログ上で『お菓子の夢先案内人』と謳っているので、夢のあるお菓子、panipopoにしか出来ないお菓子、それも美味しくきれいに、がモットーです。


〔イ〕  確かに、panipopoさんのレシピは、丁寧に説明されてて、ちょっと難しそうって思うお菓子も、これならチャレンジ出来そうかなー? って思います。


〔p〕  面白いのが、お菓子作りは料理と違って、もっと科学的なプロセスを踏むことだと、パティシエ時代に学んだんです。ちょっと、大げさに言うと、製菓は科学とアートの世界が共存したものだと思います。夫はプロのフレンチシェフですが、やはりお菓子作りをさせると、やり方が違います。


〔イ〕  それは面白い。料理とお菓子の違いは興味深いですね!


〔p〕  はい。違いを感じると同時に、料理もデザートもプロの夫に手順の細かい説明をしていると、ブログを見ている方がまったくの初心者さんだったら、お菓子作りはもっと難しく感じるのでは・・・? と、思い、そういう意味でも少しでも分かりやすく説明しようと改めて思いました。

〔イ〕  なるほど。プロのご主人を見て、更にブログを読んでいる方にはどうか、とその先を考えてレシピを書いているので、完成を見ると難しそうなムースや焼き菓子が身近に感じられるんですね。



ブログは、自分にとっては子どものような存在、愛情をかけている大切な存在。それを大切に育てて、成長を楽しみにしている、それが自分の成長に繋がるから・・・と語るpanipopoさん。
時には落ち込んでる時の心情をありのままに、時には読んで下さっているみんなと一緒に喜んだりと、panipopoさんのブログからはこの2年半の間の風景が手に取るように伝わってきます。そんな、panipopoの子どものような存在のブログへ思う未来とは・・・?


〔p〕  お菓子は料理と違って、なくてもいいものです。別に生活する上で、必要ではないものですが、お菓子を食べると和む、あるいは作って家族や友達の喜ぶ顔を見るのが好きという人達を増やすお手伝いをしたいと思っています。
そして、お菓子は夢があるよ、癒しでもあるよ、ということも伝えていけたら、嬉しいなって思いますね。お菓子を見るとワクワクするという気持ちを、みんなに持っていただけたら、本望かなって思います。



お菓子を作ることを一度は止めたpanipopoさん。友達の置き土産から、お菓子とブログが新しい世界を導いてくれて・・・長い海外生活から今春、日本に帰国されたのもまた新しい世界へのチャレンジの第一歩なんだそう。
ちなみに、一緒に日本に帰国されたフランス人シェフのご主人は、趣味のテニス仲間(もちろん日本人! )を見つけて週末、テニスを楽しみ、すっかり日本の生活に(panipopoさんよりも!? )馴染んでいるようです。

次回後編は7月16日(金)アップ予定。ご主人のお話から日本での新しいスタートetc・・・プライベートなお話をたっぷりと♪ どうぞお楽しみに!


panipopoさんのおススメレシピ 抹茶のフィナンシェ
panipopoさんのおススメレシピ 抹茶のフィナンシェ
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